ブラック企業が引き起こす病気と心身を守るための対処法
「体調が悪いのは、気のせいかもしれない」「他の人も同じように働いているから、自分が弱いだけかも」——そんな思いを抱きながら働き続けていませんか?
ブラック企業で働き続けることで、心身に深刻な影響を受ける人は少なくありません。過労による身体疾患や、うつ病・適応障害などの精神的な病気に悩まされるケースは年々増加しています。
本記事では、ブラック企業による病気の実態とその兆候、放置した場合のリスク、そして自分の健康を守るためにできることを徹底的に解説します。
1. 病気につながる労働環境とは
ブラック企業に共通する特徴のひとつが、「健康を脅かす労働環境」です。肉体的・精神的ストレスが重なり、最終的に病気へと至るケースが多発しています。問題は、そのような環境に長く身を置くことで“異常”が“当たり前”になってしまうことです。
過労とストレスがもたらす影響
厚生労働省の報告でも、長時間労働が原因でうつ病や心筋梗塞などの疾患を発症した労災認定件数は年々増加傾向にあります。中でも精神障害の認定件数は、2020年には600件以上にのぼりました。
ブラックな環境の具体的な例
- 毎月80時間を超えるサービス残業
- 有給を取らせない、休日の強制出勤
- 上司からの人格否定・暴言
- 成果を出さないと“罰”のような扱いを受ける
- 常に人手不足で、過剰な業務を押し付けられる
こうした環境が続くと、身体の疲労が蓄積するだけでなく、「もう無理」と感じても逃げられない心理状態に追い込まれ、心の病気へと発展していきます。
次章では、ブラック企業に勤務することで実際に発症しやすい病気の種類と、そのリスクについて詳しく解説します。
2. ブラック企業が引き起こす主な病気の症状とリスク
ブラック企業で働くことによって引き起こされる病気は多岐にわたります。ここでは、代表的な疾患とその症状、進行した場合のリスクについて解説します。
① うつ病
慢性的なストレスや長時間労働、パワハラなどによって、自分を否定的に捉えるようになり、気分が落ち込み、意欲が湧かなくなるのが「うつ病」です。
- 朝起きられない、会社に行くのが苦痛
- 食欲の低下、体重の急減
- 自分を責め続ける、未来に希望が持てない
うつ病は放置すると自殺念慮につながる危険もあるため、早期の対応が不可欠です。
② 適応障害
特定のストレス(上司の叱責、人間関係など)により、精神的に強い負荷を受け、職場に適応できなくなる症状です。
- 出勤前になると腹痛や吐き気がする
- 仕事のことを考えるだけで動悸や不安が出る
適応障害は“心の警報”とも言え、早めの受診・休職で回復することが多いです。
③ 不眠症・睡眠障害
心身のストレスが蓄積すると、眠れなくなったり、眠っても疲れが取れない状態になります。
- 夜中に何度も目が覚める
- 眠りが浅く、日中の集中力が低下する
睡眠障害は、メンタル不調の入り口ともいえる重要なサインです。
④ 過労による身体疾患
心だけでなく、体にも大きな負担がかかります。
- 高血圧・胃潰瘍・心疾患・脳出血などの生活習慣病
- 女性の場合、生理不順やホルモンバランスの乱れ
過労死の多くは、こうした症状が“限界”を超えたときに起こります。
次章では、これらの病気に進行する前に気づくための「初期サイン」と、見逃さないためのセルフチェックリストを紹介します。
3. 病気のサインを見逃さないチェックリスト
病気の多くは、突然重症化するのではなく、初期段階で“心と体の異変”として現れます。ブラックな環境にいると、これらのサインを「気のせい」「自分が弱いだけ」と見過ごしてしまいがちですが、早期発見・早期対応が何よりも重要です。
精神的な異変のサイン
- 涙が止まらなくなる瞬間がある
- ふとした瞬間に「消えてしまいたい」と思う
- 無気力で、趣味や会話に関心が持てない
- 他人と比較して自分を責め続けてしまう
身体的な異変のサイン
- 毎朝の頭痛や吐き気が日課になっている
- 食欲がない、または暴飲暴食が止まらない
- 月経周期が乱れた
- 肩こりや胃痛などの“原因不明の痛み”が続く
行動面の異変のサイン
- 遅刻や欠勤が増えた
- 休日も気が休まらない、寝ても疲れが取れない
- ネガティブなニュースに過敏に反応する
これらの項目のうち3つ以上に該当する場合は、すでに心や体が“限界”のサインを出している可能性があります。次章では、相談先や回復への具体的なステップについて詳しくご紹介します。
4. 相談先と回復までのステップ
もし今の職場環境が心身の健康に悪影響を与えていると感じたら、一人で抱え込まずに“外部の力”を借りることが重要です。ここでは、相談できる窓口と、回復に向けたステップを解説します。
① まずは信頼できる人に相談する
家族・友人・同僚など、自分をよく知っている人に「最近つらい」と話すだけでも、気持ちが軽くなります。また第三者の視点から、今の状況を客観的に見直すきっかけにもなります。
② 心療内科・メンタルクリニックを受診する
心身の不調が続いている場合は、迷わず医療機関を受診しましょう。症状によっては診断書が発行され、「休職」や「労災申請」の根拠になります。初診の段階で、現在の職場状況を簡単に説明できるメモを持参するとスムーズです。
③ 会社と距離を置く(休職・退職)
健康を守るうえで、職場から離れる選択はとても大切です。医師の診断書により「休職」が認められれば、傷病手当金を受けながら回復に専念できます。やむを得ない場合は、退職代行やユニオンを通じて「安全に辞める」ことも可能です。
④ カウンセリング・リワーク支援の活用
自治体や企業内EAP、民間のカウンセリング施設では、うつ病や適応障害などで休職した方を対象に「復職プログラム(リワーク支援)」を実施している場合があります。焦らず、自分のペースで回復に向かうために活用しましょう。
⑤ 回復後の転職活動は“ブラックを避ける目”が重要
同じ失敗を繰り返さないためにも、転職活動では「企業研究」や「労働環境の調査」を重視してください。口コミサイト、面接での逆質問、求人票の読み解きなどが有効です。
次章では、実際にブラック企業で病気になりながらも、自身の力で回復・再出発した人たちのリアルな声をご紹介します。
5. 実際に病気を乗り越えた人の事例
ここでは、ブラック企業で心身に不調をきたしながらも、正しい行動と支援を受けて回復・再出発を果たした3名の実例をご紹介します。これらの体験談から、病気になっても人生は立て直せることを実感していただければと思います。
事例1:営業職でうつ病を発症し、IT業界へ転職(28歳・男性)
毎月100時間を超える残業と上司のパワハラにより、次第に無気力になり「朝が怖い」と感じるように。心療内科でうつ病と診断され休職。半年間の休養とカウンセリングを経て、IT業界に未経験転職。現在はリモートワーク中心で安定した生活を送っている。
事例2:適応障害から復職を目指した女性(26歳・女性)
保育士として勤務していたが、人員不足により毎日12時間労働+土日も研修。出勤時に吐き気や動悸が出るようになり受診、適応障害と診断。休職後に復職支援プログラムを利用し、現在は時短勤務で徐々に復職中。「あのとき、逃げて良かった」と語る。
事例3:過労性心疾患で倒れたが再起(35歳・男性)
建設現場で月6日勤務・16時間労働が続き、現場で意識を失って救急搬送。高血圧と心臓疾患が原因とされ、労災申請が認定された。その後、労働環境を見直し、異業種へ転職。現在は定時で帰れる環境で体調も安定。「健康を守ることが一番の仕事」と語る。
次章では、ブラック企業で病気になった際によくある質問や、読者が抱えやすい疑問にお答えしていきます。
6. よくある質問(FAQ)
Q1. ブラック企業で働いて体調を崩しました。会社に責任を問えますか?
A. 状況によっては可能です。診断書や労働時間の記録などの証拠があれば、労災申請や損害賠償請求につながることもあります。まずは労働基準監督署や弁護士に相談しましょう。
Q2. 病気で休職すると、会社に不利な扱いを受けるのでは?
A. 労働基準法により、休職中の差別的取り扱いは禁止されています。復職後の業務調整なども含め、適切な対応を求めることが可能です。社内の産業医や人事部にも相談してみましょう。
Q3. 病気になったら転職は難しいですか?
A. 完治後であれば、転職は十分に可能です。特に近年はメンタルヘルスに理解のある企業も増えており、無理のない勤務体系で再出発する人も多くいます。
Q4. 退職する前にやっておくべきことは?
A. 健康保険・雇用保険の手続き、診断書の取得、職歴証明の確保、傷病手当金の申請などが重要です。また、転職活動は退職後よりも、休職中など時間が確保できる時期に準備するのが理想です。
Q5. ブラック企業の実態をどこに通報すればよいですか?
A. 労働基準監督署や、各自治体の労働相談センター、厚生労働省の「労働条件相談ほっとライン」などに通報できます。匿名相談も可能なので、安心して利用してください。
次は、この記事の総まとめとして、病気を防ぐためのセルフチェックリストをご紹介します。
7. まとめとセルフチェックリスト
ブラック企業での勤務が原因で、心や体の健康を損なう人は決して少なくありません。しかし、体調の異変を放置せず、正しい知識と行動によって病気を防ぎ、回復への道を歩むことは可能です。
「おかしい」と感じたら、それはあなた自身が発しているSOSです。無理を続けるのではなく、まずは自分を守る行動を優先しましょう。
🔍 セルフチェックリスト(7項目中いくつ当てはまりますか?)
- ☐ 眠れない日が続いている
- ☐ 出勤前に強い不安や吐き気を感じる
- ☐ 職場の人間関係に強いストレスを感じている
- ☐ 残業が月80時間以上ある、もしくは管理されていない
- ☐ 業務量が過剰で、常に納期に追われている
- ☐ 上司の言動に怒り・恐怖・絶望を感じることがある
- ☐ 自分の未来に対して希望が持てなくなっている
3つ以上に該当する場合、あなたはすでに心身への危険信号が出ている可能性があります。この記事で紹介した相談機関やステップを参考に、まずはひとつ、行動してみましょう。
健康は何よりの資産です。あなたの心と体を守るために、どうか無理をしないでください。