退職金がもらえない|払われない理由と請求手順・相談先まとめ

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この記事は、こんなあなたに向けて書きました

退職したのに退職金が振り込まれない。
「うちは退職金制度がない」と後から言われた。
就業規則には書いてあるのに、なぜかもらえない——
そんな不安と怒りを抱えたまま、どこに相談すればいいか分からないあなたへ。

実際に、退職金が振り込まれない——この状況に直面すると、生活費の計画が一気に崩れます。「そもそも請求できるのか」「泣き寝入りするしかないのか」と悩む人は少なくありません。

結論から言うと、就業規則や労働契約に退職金の定めがある会社では、退職金は法的に請求できる「賃金」です。すなわち、制度があるのに払わないのは、給料の未払いと同じ違法行為にあたります。

そこでこの記事では、退職金がもらえないケースの見分け方から、証拠の集め方、内容証明での請求、労基署や弁護士への相談ルートまで、退職後でも在職中でも動ける形でまとめました。

📌 この記事で分かること

  • 退職金を請求できるケース・できないケースの判断基準
  • 退職金の相場と計算方法(勤続年数別の目安)
  • 「退職金がもらえない」と言われたときの請求手順(5ステップ)
  • 相談先の使い分け(労基署・労働局・弁護士)
  • 時効(5年)を止める方法と、請求を有利にする証拠の集め方

退職金は法律で決まっている?まず「もらえる前提」を確認する

まず、退職金について最初に押さえておくべき事実があります。実は、日本の労働基準法には「会社は退職金を払わなければならない」という規定はありません。つまり、退職金を支給するかどうかは、各会社が自由に決めてよいことになっています。

ただし、ここが重要です。会社が「退職金を払う」と定めた場合は話が変わります。就業規則・退職金規程・労働契約書のいずれかに退職金の支給条件と計算方法が書かれていれば、退職金は労働基準法第11条の「賃金」に該当します。言い換えれば、賃金である以上、払わなければ違法です。

💡 つまり

すなわち、「退職金制度がある」会社で条件を満たしているなら、会社には支払う法的義務があります。それゆえ。「うちは払わない方針に変えた」「業績が悪いから」といった言い訳は通用しません。

退職金制度の有無を確認する3つの方法

では、自分の会社に退職金制度があるか分からない人は、次の3か所を確認してください。

確認先 見るべきポイント 手に入れ方
就業規則 「退職金」の章や別紙の退職金規程があるか 社内イントラ・総務に閲覧請求(労基法第106条で周知義務あり)
労働契約書(雇用契約書) 「退職金:有」の記載があるか まず、入社時にもらった書類を探す。紛失なら再発行を依頼
労働条件通知書 退職金の欄に「有・制度あり」等の表示があるか 入社時の交付書面を確認。2024年4月以降は明示義務が強化された

⚠️ 「見せてもらえない」も違法の可能性

就業規則は10人以上の事業所で作成・届出義務があり、労働者がいつでも閲覧できる状態にしなければなりません(労基法第106条)。「見せられない」と言われたら、それ自体が法律違反にあたります。したがって、すぐに対処してください。就業規則を見せてくれない会社の対処法はこちらで詳しく解説しています。

退職金がもらえない5つのパターンと対処の方向性

「退職金が出ない」と一口に言っても、実は原因は様々です。大きく分けると5つのパターンがあり、それぞれ動き方が異なります。

# パターン 請求可能か 対処の方向性
1 そもそも退職金制度がない 請求不可 つまり、制度がない場合は法的請求が難しい(慣行の主張は別)
2 制度はあるが「勤続3年未満」等の条件に未達 原則請求不可 まず、規程の条件を確認し、本当に未達かをチェック
3 制度があり条件も満たしているのに払わない 請求可能(違法) したがって、証拠を集めて内容証明 → 労基署 → 弁護士の順で動く
4 「懲戒解雇だから不支給」と言われた 争う余地あり そのため、不支給条項の有効性と懲戒事由の妥当性を検討する
5 退職金規程を退職後に不利益変更された 請求可能(違法) したがって、変更前の規程が適用される。さらに、変更の合理性を争う

最も多いのはパターン3

特に、このうち最も多いのがパターン3です。「業績が悪い」「自己都合だから」「引き継ぎが不十分だから」など、様々な理由をつけて支払いを渋るケースですが、就業規則で支給条件が定められている以上、これらは支払い拒否の正当な理由にはなりません。

✅ パターン1でも諦めないケース

就業規則に明文規定がなくても、長年にわたって退職者に一定額を支払ってきた実績があれば「労使慣行」として退職金請求が認められた裁判例もあります。そのため、過去の退職者がもらっていたかどうかも調べてみる価値があります。

退職金の相場|勤続年数別の目安を知っておく

次に、会社から提示された退職金が「適正なのか」を判断するために、世間の相場を把握しておきましょう。厚生労働省の「就労条件総合調査」などの統計データを基にした、一般的な目安は次のとおりです。

勤続年数 大企業(大卒) 中小企業(大卒)
3年 約60〜80万円 約20〜40万円
5年 約110〜150万円 約45〜70万円
10年 約300〜500万円 約100〜180万円
20年 約800〜1,200万円 約300〜500万円
定年(35年〜) 約1,800〜2,500万円 約700〜1,200万円

計算方式は会社ごとに異なる

具体的には、退職金の計算方式は「基本給連動型」「ポイント制」「定額制」など会社によって異なります。しかし、最も多いのは基本給 × 勤続年数に応じた支給率で算出するタイプです。

そのため、まずは自分の退職金規程にどの方式が書かれているかを確認し、自分で計算してみてください。

⚠️ 自己都合退職は減額されるケースが多い

ただし、多くの退職金規程では、自己都合退職の場合に支給率が5〜7割程度に減額されます。もちろん、減額されること自体は規程に基づいていれば適法ですが、しかし、減額ではなく「不支給」になっている場合は注意が必要です。したがって、規程の不支給条項が本当に自分に当てはまるのか、よく確認しましょう。

退職金がもらえないときの請求手順(5ステップ)

それでは、退職金制度があるのに支払われない場合はどうすればいいのでしょうか。結論として、具体的には、以下の5ステップで段階的に進めることで、費用を抑えながら請求できます。

5つのステップの流れ

📋 退職金請求の5ステップ

ステップ1:退職金制度の証拠を集める

就業規則の退職金規程、労働契約書、労働条件通知書をコピーまたは写真で保存する。例えば、在職中なら社内システムからダウンロードし、退職後なら労基署に届出されている就業規則の閲覧を請求できる。

ステップ2:退職金の金額を自分で計算する

退職金規程に基づいて「自分が本来もらえる金額」を算出する。つまり、基本給・勤続年数・支給率(自己都合/会社都合)を確認し、具体的な金額を把握する。

ステップ3:会社に書面で請求する(内容証明郵便)

例えば、「退職金○○円を○月○日までに振り込むよう請求します」という内容証明郵便を送る。さらに、配達証明付きにすれば、会社が受け取った事実が証明できる。また、内容証明を送ると消滅時効の完成猶予(6ヶ月間)効果もある。

ステップ4:外部機関に相談する

それでも書面で請求しても払われない場合は、労働基準監督署への申告、都道府県の労働局による「あっせん」制度の利用を検討する。なお、あっせんは無料で利用でき、合意に至れば法的な和解と同等の効力が得られる。

ステップ5:弁護士に依頼する(労働審判・訴訟)

さらに、ステップ4でも解決しない場合は弁護士に相談する。なぜなら、労働審判は原則3回以内で結論が出るため、通常の訴訟より早く解決できる。ただし、弁護士費用は着手金10〜30万円程度が相場だが、退職金額が大きければ十分に元が取れる。

内容証明郵便の書き方と送り方

続いて、ステップ3の内容証明郵便は、退職金請求の最初の「公式なアクション」です。なぜなら、内容証明を受け取ると、会社側は「知らなかった」とは言えなくなり、多くの場合ここで支払いに応じます。

内容証明に記載する項目

記載すべき5つの要素

① 自分の氏名・住所と、会社名・代表者名・所在地

② 退職日と在職期間

③ 退職金の根拠(「貴社退職金規程第○条に基づき」)

④ 請求する退職金の具体的な金額

⑤ 加えて、支払期限と振込先口座

なお、内容証明郵便は郵便局の窓口で出せるほか、e内容証明(電子内容証明)を使えばインターネット上で24時間手続きが可能です。しかも、費用は1,500〜2,000円程度とそれほど高額ではありません。

相談先の選び方|労基署・労働局・弁護士の違い

退職金の未払いを相談できる窓口は主に3つあります。ただし、それぞれ得意分野が異なるため、自分の状況に合った相談先を選んでください。

相談先 できること 限界 費用
労働基準監督署 就業規則に退職金規定がある場合、会社への是正指導・調査が可能 支払いの強制はできない。代理交渉もしない 無料
労働局(あっせん) 労使の間に入り、話し合いの場を設けてくれる。合意すれば和解と同等 ただし、会社が参加を拒否すれば不成立になる 無料
弁護士 代理交渉・労働審判・訴訟のすべてに対応できる 費用がかかる(着手金10〜30万円+成功報酬) 有料

💡 おすすめの進め方

まずは内容証明(自力)→ 労基署への相談 → 労働局あっせんの順で進めて、それでも解決しなければ弁護士に依頼するのが費用を最小限に抑える方法です。例えば、退職金の額が100万円を超える場合は、最初から弁護士に相談する選択もあります。なお、初回無料相談を実施している事務所も多いため、まずは相談だけでもしてみてください。

費用を抑えるおすすめの進め方

加えて、労基署への相談方法について詳しくは労基署への通報方法|在職中バレない手順と証拠の準備の記事を参考にしてください。

退職金請求の時効は5年|早めに動くべき理由

重要なのは、退職金の請求権には時効があるという点です。2020年4月の民法改正により、退職金の消滅時効は退職日の翌日から5年に延長されました(労基法第115条、経過措置により当面は5年)。

しかし、とはいえ、5年と聞くと余裕があるように感じますが、実際には時間が経つほど証拠が散逸し、会社側の担当者が異動する可能性もあります。そのため、「退職金が振り込まれない」と気づいた時点で、できるだけ早く動き始めてください。

🚨 時効を止める方法

内容証明郵便を送ると、送付日から6ヶ月間は時効の完成が猶予されます(催告による時効完成猶予)。そして、この6ヶ月以内に労働審判の申立てや訴訟提起をすれば、時効は確定的に中断(更新)されます。だからこそ、「まだ時間がある」と思っても、まず内容証明だけは早めに出しておくのが鉄則です。

会社がよく使う「退職金を払わない言い訳」への反論

退職金の支払いを拒む会社は、もっともらしい理由を並べてきます。しかし、いずれも法的には通用しないケースがほとんどです。そこで、ここではよくある言い訳とその反論をまとめました。

業績悪化・自己都合を理由にした拒否

❌「業績が悪いから払えない」

→ 退職金は賃金であり、会社の業績に関係なく支払義務があります。つまり、「払えない」は法的に通用しません。さらに、万が一、会社が倒産した場合でも、独立行政法人労働者健康安全機構の「未払賃金立替払制度」を利用すれば、退職金の一部(上限あり)を国が立て替えてくれます。

❌「自己都合退職だから出ない」

→ 実際に、多くの退職金規程は自己都合退職でも支給(減額の場合あり)と定めています。そのため、「自己都合=不支給」と決めつけず、退職金規程の文言を確認してください。実際、自己都合でも「不支給」とは書かれていないケースがほとんどです。

引き継ぎ・懲戒解雇・制度廃止を理由にした拒否

❌「引き継ぎが不十分だから減額する」

→ つまり、引き継ぎの不備を理由とした退職金の減額・不支給は、規程に明記されていない限り認められません。つまり、退職金規程に「引き継ぎが完了しない場合は減額する」という条項がなければ、減額は違法です。引き継ぎと退職の権利関係はこちらで解説しています。

❌「懲戒解雇だから退職金は全額没収」

→ 実際には、懲戒解雇であっても退職金の全額不支給が認められるのは、長年の功労を帳消しにするほどの重大な非違行為があった場合に限られます(判例)。したがって、軽微な規律違反で全額不支給にするのは権利濫用として無効になる可能性があります。

❌「退職金制度は廃止した」

→ そもそも、退職金制度の廃止は「労働条件の不利益変更」にあたり、労働者の合意なく一方的に行うことは原則としてできません(労働契約法第9条・第10条)。つまり、あなたが知らないうちに廃止されていた場合、その変更自体が無効である可能性があります。

請求を有利にする証拠の集め方

実際に、退職金請求では「制度がある」「条件を満たしている」「支払われていない」の3点を証明する必要があります。したがって、以下の証拠を、できるだけ在職中に集めておいてください。

証拠の種類と入手方法

以下の表で、それぞれの証拠を確認しましょう。

証明したいこと 有効な証拠 入手方法
退職金制度が存在する 就業規則(退職金規程)、労働契約書、労働条件通知書、求人票 社内イントラからダウンロード、またはスマホで撮影。なお、退職後は労基署に届出された就業規則を閲覧
支給条件を満たしている 雇用保険被保険者証、給与明細、源泉徴収票(勤続年数の証明に使える) また、手元の書類を確認。ハローワークで雇用保険加入期間を照会することも可能
退職金が未払いである 銀行口座の入出金明細、退職金支払いの催促メール・書面のコピー 具体的には、銀行のネットバンキングで明細をダウンロード
会社が支払拒否の意思を示した メール、LINE、録音データ(「払わない」と言われた記録) 例えば、やり取りのスクリーンショット、電話の録音(日本では私的録音は適法)

さらに、具体的な証拠集めのポイントはスマホ録音の手順と証拠の残し方の記事も参考になります。

style=”margin-top:28px;”>在職中に動くのが鉄則

もちろん、退職後でも集められる証拠はありますが、在職中のほうが圧倒的に集めやすいのが現実です。そのため、「辞める前」に動くことを強くおすすめします。なぜなら、就業規則のコピーは退職後に入手が難しくなるケースが多いので、在職中に確保しておきましょう。

中小企業退職金共済(中退共)に加入している場合

一方で、会社が「中小企業退職金共済(中退共)」に加入している場合、退職金は会社からではなく中退共から直接あなたに支払われます。したがって。つまり、つまり、たとえ会社が「払わない」と言っても、中退共に直接請求すれば退職金を受け取れます。

具体的には、自分の会社が中退共に加入しているかどうかは、毎年届く「退職金共済手帳」の有無、または中退共のホームページで確認できます。そのため、入社時に退職金共済の説明があった人は、会社を介さず直接請求することも選択肢に入れてください。

✅ 中退共のメリット

つまり、中退共からの退職金は、会社の経営状態に左右されません。会社が倒産しても、加入期間分の退職金は確実に受け取れます。さらに、請求手続きは退職後に「退職金請求書」を中退共に郵送するだけです。

会社が倒産した場合の退職金|未払賃金立替払制度

また、退職金を受け取る前に会社が倒産してしまった場合でも、完全に泣き寝入りする必要はありません。なぜなら。具体的には、独立行政法人労働者健康安全機構による「未払賃金立替払制度」を使えば、未払い退職金の一部を国が立て替えてくれます。

立替払制度のポイント

・対象:退職日の6ヶ月前〜請求日の前日までに支払期日が到来した未払賃金(退職金を含む)

・立替払の上限額:退職時の年齢に応じて88〜296万円

・また、支払額:未払賃金総額の80%(上限以内)

・申請先:労働基準監督署を経由して労働者健康安全機構に請求

ちなみに、倒産には「法律上の倒産」(破産手続開始など)と「事実上の倒産」(事業活動が停止し再開の見込みがない状態)の2種類があり、どちらでも制度を利用できます。いずれにせよ、倒産が確定したらすぐに管轄の労基署に相談してください。

まとめ|退職金がもらえないときにやること

退職金の未払いは、決して珍しいトラブルではありません。しかし、泣き寝入りする必要はまったくありません。最後に、ここまでの内容をまとめます。

📌 今日からやるべきこと

  • まず確認:就業規則・労働契約書で退職金制度の有無と支給条件をチェックする
  • 次に計算:退職金規程に基づいて自分がもらえる金額を算出する
  • 証拠を固める:規程のコピー、勤続年数の証明、口座明細を手元に集める
  • 書面で請求:内容証明郵便で会社に退職金の支払いを請求する(時効停止の効果もある)
  • 解決しなければエスカレーション:労基署 → 労働局あっせん → 弁護士(労働審判)の順で進める

行動を先延ばしにしないために

要するに、退職金の請求権の時効は5年です。だからこそ、「まだ大丈夫」と先延ばしにしていると、その結果、証拠は失われ、会社の担当者も変わります。まずは退職金規程のコピーを手元に確保し、今日できるところから動いてみてください。あなたが長年働いた対価は、正当に受け取る権利があります。