最低賃金割れを自分で確認する計算方法|差額を請求する手順

労働問題
  1. ホーム
  2. 労働問題
  3. 最低賃金割れを自分で確認する計算方法|差額を請求する手順

この記事は、こんなあなたに向けて書きました

「固定残業代あり・月給20万円」と書いてあったのに毎月100時間超の残業。給料が少ない気はするけど、最低賃金を割っているかどうか確認したことがない——そんな方へ。

📌 この記事で分かること

  • 月給・日給を時給換算して最低賃金違反かどうかを自分で確認する計算手順
  • ブラック企業で最低賃金割れが起きやすい3つのパターン
  • 最低賃金に「含めてはいけない手当」の見分け方
  • 違反が確認できた場合に差額を請求する在職中の手順
  • 差額の時効と遡及して請求できる期間

しかし、最低賃金は正社員にも適用される。「月給制だから関係ない」は誤りで、残業が多い職場ほど時給換算すると最低賃金を下回りやすい。まず自分の給料を計算してみることが、今日できる最初の一歩だ。

最低賃金とは|正社員も全員対象

最低賃金とは、会社が労働者に支払わなければならない賃金の最低額を定めた制度だ(最低賃金法第4条)。都道府県ごとに毎年改定される「地域別最低賃金」が全ての労働者に適用される。つまり、正社員・パート・アルバイト・契約社員・派遣社員、すべてが対象だ。

2025年時点の最低賃金(目安)

全国加重平均は2024年10月に1,055円に引き上げられた。東京都は1,163円、大阪府は1,114円など、都市部ほど高い水準になっている。自分が働く都道府県の最低賃金は厚生労働省のサイトで確認できる。

⚠️ 会社と労働者の合意があっても最低賃金以下は無効

「採用時に承諾した」「労働契約書にサインした」という事実があっても、最低賃金を下回る賃金は法律上無効になる。最低賃金額と同額の定めをしたものとみなされるため、差額は請求できる。

▶ 地域別最低賃金の全国一覧(厚生労働省)

自分の時給を計算する方法|3つの給与形態別

最低賃金は時給で設定されているため、月給・日給の人も時給に換算して比較する必要がある。計算に使う「給与額」には含めてはいけない手当があるため(後述)、まずシンプルに計算する方法を確認しよう。

月給制の場合

📐 計算式

時給 = 月給(基本給+対象手当) ÷ 月の所定労働時間

例:基本給18万円・所定労働時間160時間(月)の場合
180,000円 ÷ 160時間 = 1,125円
→ 東京都(1,163円)では最低賃金を下回っている。大阪府(1,114円)では上回っている。

日給制の場合

📐 計算式

時給 = 日給 ÷ 1日の所定労働時間

例:日給8,000円・1日8時間の場合
8,000円 ÷ 8時間 = 1,000円
→ 多くの都道府県で最低賃金(1,004〜1,163円)を下回る可能性がある。

歩合給・インセンティブが含まれる場合

📐 計算式

時給 = 賃金総額(対象分のみ) ÷ 賃金計算期間の総労働時間

歩合給は月によって変動するため、成績が悪い月は最低賃金を下回るリスクがある。また、基本給が低く歩合依存が大きい職場はブラック企業によく見られる構造だ。

計算に使う給与額から「除外すべき手当」

なお、最低賃金との比較に使える賃金は、毎月決まって支払われる基本的な賃金に限られる。以下の手当は比較の対象から外して計算しなければならない。そのため、給与明細で「総支給額」をそのまま使うと、最低賃金違反が見えにくくなる点に注意が必要だ。

除外する手当(対象外) 理由
割増賃金(残業代・休日手当・深夜手当) 通常の労働時間を超えた分の追加賃金のため
賞与・ボーナス 毎月決まって支払われるものではないため
通勤手当 実費補填であり労働の対価ではないため
家族手当・住宅手当(生活補助的なもの) 労働の内容・量と直接関係しないため

⚠️ 「固定残業代」が含まれている場合の注意点

月給に「固定残業代(みなし残業代)」が含まれている場合、その固定残業代分は比較対象から除外して計算する。たとえば「基本給18万円+固定残業代3万円(30時間分)」の場合、最低賃金との比較に使うのは基本給の18万円のみだ。固定残業代を含めて計算すると違反が隠れやすくなるため、注意が必要だ。

▶ ブラック企業の固定残業代の手口|違法チェック7項目と在職中の追加請求手順

ブラック企業で最低賃金割れが起きやすい3パターン

最低賃金違反は中小企業やブラック企業に特に多い。以下の3パターンは特に注意が必要だ。

パターン① 固定残業代込みの「見かけ上の高月給」

「月給22万円(固定残業代45時間分含む)」と書かれているケース。そのため、固定残業代を除いた基本給は実質14〜16万円程度になることがあり、時給換算すると最低賃金を下回る場合がある。また、実際の残業が固定残業代の想定時間を超えているにもかかわらず追加払いがないケースも多い。

パターン② 残業代がサービス残業(未払い)の職場

つまり、サービス残業があると実際の労働時間が分母に入るため時給が下がる。たとえば月給18万円・所定労働160時間に対して実残業60時間あっても残業代ゼロの場合、実質時給は180,000円÷220時間=818円となり、多くの都道府県で最低賃金を大幅に下回る。

パターン③ 最低賃金の毎年引き上げに給与が追いついていない

なお、最低賃金は毎年10月に改定・引き上げられる。入社時には最低賃金以上だった給与が、数年経つうちに最低賃金を下回るようになることがある。特に数年間昇給がない職場は、毎年10月に確認する習慣が必要だ。

最低賃金違反が確認できたら|差額を請求する手順

したがって、計算して最低賃金を下回っていることが分かったら、在職中でも差額を請求できる。段階を踏んで動くことが現実的だ。

ステップ1 証拠を保全する

今すぐ個人端末に保存すべきもの

まず、給与明細(過去分も含め全月分)、雇用契約書または労働条件通知書、タイムカード・出退勤記録のコピーまたは写真、残業時間の自分の記録(手帳・スマホメモ)——これらを個人スマホまたは個人クラウドに保存する。給与明細が電子化されている場合は、ダウンロードして保存する。

ステップ2 計算して差額を出す

具体的には、「最低賃金 × 実労働時間」と「実際に受け取った賃金」の差額を計算する。できれば月ごとに一覧を作っておくと、交渉・申告時に説得力が増す。計算方法が分からない場合は、労基署の無料相談窓口に持参して確認してもらうのが確実だ。

ステップ3 会社に支払いを求める

まず証拠と計算結果を持って会社(人事・給与担当)に「最低賃金を下回っている月があります。差額の支払いをお願いしたい」と申し出る。書面または口頭で申し出る場合、その日付と内容をメモに残しておくことが重要だ。誠実に対応してもらえる会社なら、ここで解決する。

ステップ4 労働基準監督署に申告する

また、会社が対応しない場合は最寄りの労基署に申告する。最低賃金違反は最低賃金法第4条違反であり、会社は50万円以下の罰金(地域別最低賃金違反の場合)に処される可能性がある。在職中の申告も可能で、申告後に不利益な扱いをすることは禁止されている。

▶ 全国の労働基準監督署一覧(厚生労働省)

▶ 残業代の未払いを取り戻す方法|計算・時効・請求手順まとめ

差額の時効|いつまで遡れるか

最低賃金の差額も賃金の一種であるため、未払い賃金の時効ルールが適用される。2020年4月以降に発生した賃金については時効が3年に延長されており、それ以前は2年だ。

支払期日 時効期間
2020年4月1日以降に支払期日が到来した賃金 3年(当面の措置として3年、将来的に5年に延長予定)
2020年3月31日以前に支払期日が到来した賃金 2年

つまり今日時点で、最大3年前まで遡って差額を請求できる可能性がある。給与明細が残っているほど有利で、早めに動くほど請求できる金額が増える。

よくある質問

チェック・計算について

Q. 試用期間中は最低賃金が下がると言われました。本当ですか?

ただし、一定条件下では都道府県労働局長の許可を受けた場合のみ、最低賃金の減額特例が認められる(最大10%減)。ただし、会社が「試用期間だから最低賃金以下でいい」と勝手に決めることはできない。許可なく下げている場合は違反だ。試用期間中の給与が気になる場合は、労基署に確認することを勧める。

Q. 残業代がゼロで計算すると最低賃金を割りますが、残業代が出ていれば大丈夫ですか?

つまり、残業代が適正に支払われていれば、残業時間に対しても最低賃金を上回る時給が確保される。そのため、残業代が正しく支払われている場合は問題ない。しかし残業代が未払いの場合は、実質的に最低賃金を下回る状況になることがある。つまり残業代未払いと最低賃金違反は、同時に発生しやすいセットの問題だ。

請求・申告について

Q. 在職中に申告してバレたら報復されませんか?

労基署への申告を理由とした解雇・降格・嫌がらせは、労働基準法第104条2項で禁止されている。違反した会社には30万円以下の罰金が科される可能性がある。また、申告した事実を会社に直接伝えずに進めることもできる。まずは相談という形で連絡してみることを勧める。

Q. 差額は少額だと感じますが、それでも請求できますか?

また、月数百円の差額でも、3年分積み上げると数万〜数十万円になる場合がある。なお、最低賃金違反には付加金の規定はないが、未払い賃金として労基法第114条に基づく付加金(同額)を請求できる可能性があるため、一度専門家や労基署に相談することを勧める。

▶ 給与カット・勝手に給料を下げられた|違法チェックと在職中に差額を取り戻す手順

▶ ブラック企業の相談先6つ|悩み別の選び方と無料窓口

自分の都道府県の最低賃金はこちらで確認できる。

▶ 最低賃金法(e-Gov法令検索)

まとめ|まず給与明細を出して計算してみる

✅ この記事のまとめ

  • 最低賃金は正社員含む全ての労働者に適用される——月給制でも確認が必要
  • 月給÷月の所定労働時間で時給を計算し、自分の都道府県の最低賃金と比較する
  • 固定残業代・通勤手当・ボーナスは比較対象に含めない
  • 残業代未払い+固定残業代ありの職場は、最低賃金割れが特に起きやすい
  • 違反が確認できたら、証拠を保全して会社への申し出→労基署申告の順で動く
  • 差額の時効は3年——今日計算して動けば過去3年分まで遡れる

「自分は関係ない」と思っている人ほど、一度計算してみてほしい。なぜなら、残業が多い職場・固定残業代がある職場・数年昇給がない職場は、最低賃金割れが潜んでいる可能性がある。給与明細と今月の労働時間を手元に用意して、今日の昼休みに計算してみることが、最初の一歩だ。

▶ 名ばかり管理職のチェックリスト|在職中に残業代を取り戻す手順

著者

モブリーマン

生まれも育ちもブラック企業 アルバイトもブラックとブラックに愛され続けた人生 ブラック環境で働いた経験やブラック企業の見分け方について 紹介していきます

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です